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ギター内蔵型プリアンプをDIY

1.何でプリアンプ・ブースターか

私は繊細なレースセンサーの音色が好きです。オーバートライブしてしまえばあまり大きな違いは無い様に思いますが「芯」がしっかりとしたオーバードライブが好きです。また、ポットを少し下げた時に出るクリーントーンにした時にキラキラしたクリスタルがはじける様な?音はすごく好きです。

でもレースセンサーはどうも出力が小さめなのが気になります。

今回はアクティブ回路を加える事でレースセンサーの繊細な音を最大限に生かせるハイパワー化をやってみます。

2.どんなプリアンプにするか

簡単にハイパワー化するには、各社様々なプリアンプ・ブースターなどが販売されていますのでフロントカバーを開けてブースター兼ボリュームポットを変えると言うやり方もありますが、

・取り付けスペースが足りなかったり、
・配線が微妙にわからなかったり

と言うトラブルもあるようです。
今回の回路は

1.部品点数が少ない事(速く安くできる)
2.省スペースな事(ボリュームポットの間等に設置できる)
3.十分な効果を発揮する事(PUの性格を損なわずローノイズで出力できる)
4.電池がそこそこ持つこと
(9V電池の収納場所にもよるがしょっちゅう交換するのは面倒クサイ)

と言う点を重視して作りました。

3.このプリアンプ・ブースターの素性は

学生時代に「ミッドブースター」なる名前で確か「ロッキンエフ」と言う雑誌だったか何かに掲載されていたアクティブ回路を自作して使っていたのを思い出しました。その時自作した回路図やその部品などはすっかり忘れてしまいましたが、とにかく非常に少ない部品点数で十分なブースト効果が得られたのを記憶しています。
当時は使わなくなったエフェクター「Fuzz」のフットスイッチ付きの金属BOXを流用してその中に自作回路と006P電池を入れて常に「ON」状態で使用していました。その当時のギターアンプはオーバードライブするのが大変でmashall Unit3等はストラトでいくら頑張ってもひずんだ音が出ないという時代でした。そのため私の後輩は「ダラスのFuzzFace」(ジミ・ヘン使用)なるエフェクターを買ってきてドライブしていました。

私はこの自作ブースターのおかげでやっとオーバードライブできるようになりました。

調べたところその当時に使っていたであろう回路を見つける事が出来ましたので、ご紹介します。通称「ストラトブースター」と呼ばれたりしています。トランジスタでなく「FET」と言う、真空管の特性に近い半導体を使います。

このブースターのいいところは非常に部品点数が少なくて済むと言う所です。

そのため設置に必要な空間も小さくなるのでギター本体の中にピックアップなどと共にひっそり設置できます。ですから特にノイズの少ないレースセンサーとの相乗効果でノイズもほとんどありませんし音もいいです。

 市販のプリアンプ(例)

サウンドハウスが若干お安い
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/31885/

 EMGの物

EMG (イーエムジー) プリアンプブースター After Burner
Kose
¥17,579(2024/05/08 18:56時点)
■プリアンプブースター

4.ブースター回路の部品点数はなんと6個?

ギター内蔵ブースター回路図

抵抗器(1/4W) 22kΩX1個
抵抗器(1/4W) 12kΩX1個
抵抗器(1/4W) 100kΩX1個
タンタルコンデンサ 1.5μFX1個
タンタルコンデンサ 10μFX1個
FET(電界効果トランジスタ) 2SK30ATMX1個

※抵抗器(1/4W) 68kΩX1個 Wコイル等出力の大きいPU使用の場合
※半固定抵抗器 50kΩX1個 ゲイン調整不要の場合は要らない(今回私は無しにしました)

回路図を見るだけで頭が痛くなる
という人は、下の部品配置接続図を見てください。「✖印」の抵抗は最初半固定抵抗の代わりに付けていましたが、音出しの結果不要と判断して後から外してしまいました。「部品1個不要」の状態にしました。純粋に部品点数6個となりました。

実際の部品配置接続画像

5.ブースターの部品を調達する

では早速部品を集めましょう。学生時代は部品調達のため昼前に秋葉原駅に降りて夕方までかかって、ホントしんどかった記憶があります。今はネットで注文出来て楽ですね。通常のデバイス屋さんでもいいのですが、

その筋の部品を結構集めて販売している「桜屋電機店」(秋葉原東京ラジオデパート内)です。会員登録すると結構少ない購入額でも割引・配送料無料と言う便利で良心的webストアです。

Xicon 【1/4W】 Carbon Composition/カーボンソリッド 3種類 各1個
SPRAGUE タンタルコンデンサー 173D 1.5u 35V 1個
SPRAGUE タンタルコンデンサー 173D 10u 20V 1個

FETは私が昔使用していた初期バージョンのJ201でもいいのですが今回は音がいいと評判の

2SK30ATM-GR TOSHIBA 生産中止品 1個

を使用します。(どちらも生産中止品ですが)(ぜひとも初期バージョンのJ201を使用したい人は足の極性が違っていますから注意が必要です)
そのまま2SK30ATM-GRを使う場合は本記事のままでOKです。データシートはこちらです。
回路全部の価格は私の発注時で千円以内に収まりました。が失敗も考えて以上を2セットオーダーしました。

またジャックを差し込むと電源が「ON」になる仕掛けにするための

SWITCHCRAFT 6.3mm ステレオジャック 12B 1個


006P9V電池を接続するための

タカチMP-T型 バッテリースナップ 1個売り 1個

も必要です。上記全部合わせて(2セット分で)2500円程度だと思います。(今後変動するかもしれませんが)

あと、私は使いませんでしたがゲイン調整に半固定抵抗をつけたいと言う人は

alpha 密閉型スモールポット 6mmシャフト RD9シリーズ POTENTIOMETER 可変抵抗器 Aカーブ50K

で代用できます。(同サイトで半固定抵抗器は見当たりませんでした)
もう一点、電池の収納ですがストラトならスプリングを3本がけにしてすき間に薄いスポンジでくるんだ電池を収めるという方法が簡単ですが、諸々の事情で、ぜひ電池ボックスが欲しいと言う人は

Dunlop 9Vバッテリーボックス

も同サイトから購入できます。(ボックスの底をカット又はギター側に加工が必要な場合があります)
私の場合、

CTSやBournsプロ用プレミアムギターポット、Fenderの5WayセレクタSW、SwitchCraft製パーツ

など諸々廉価で販売していたのであれもこれもと余分に買ってしまいました。

6.内蔵ブースターの部品を半田付け

いよいよ6個の部品を回路写真通り半田付けします。部品点数6点ですから蛇の目基盤をニッパでカットして使ってもいいのですが、今回はティアドロップ型ピックの上で軽く配置して、ホットボンドで絶縁するというユニークな方法でやってみました。
要点・注意点として

1.写真通り半田付けしてもいいのですが省スペースを考えて部品のリード線を短めにカットしながら半田付けして行く。
2.部品に過度な熱が伝わらないように「ヒートシンク」を適宜使って半田付けして行く。

ヒートシンク

半田付けの際これで部品のリード線を挟んでやると、部品にかかる余分な熱を放散してくれます。大昔から使っていますがばね部分が弱って来たので2つ新調しました。

3.FET(半導体)が静電破壊しないように3本の足にアルミ箔を巻いて作業する。

(今回のFETはMOS型半導体ではないので静電破壊はありませんが、私は半導体を扱う時はいつもこうやっています。何せ外観を見て、死んでいるのか生きているのか判らないのが面倒ですから。半田付けが終わったら除去するのを忘れないで下さい。)

4.半田ゴテは60Wを使用して短時間加熱を心掛ける。

(ボリュームポット上にアース線などをまとめて半田付けしたりするので、ある程度、高出力タイプのコテが良いと思います。低出力のコテを当ててネチネチ長時間加熱すると結果的にパーツにダメージを与えてしまう事がある様な気がします)

こて先を十分クリーンにしてから半田付けしないと無駄に加熱してしまいますので、コテ台は結構大事です。

新調したコテ台だが
こちらもコンパクトでいい

5.タンタルコンデンサー・FETの極を間違えない。

タンタルコンデンサには面倒な事に+極-極があります砲弾型の場合は砲弾の先が細くなっている方が+極、ディップ型の物はリード線の長い方+極です。
今回購入した「桜屋電機店」さんの砲弾型タンタルには最初から親切にも「-に青」「+に白」の紙テープが貼られていました。

FETはトランジスタと違って個々に極性があります。

データシート(規格表)で調べます。今回のパーツ構成ならば画像の通りに模倣すれば正解です。

 抵抗器の値は

抵抗器は大昔は値が何Ωか記載されていましたが、小型化(1/4、1/8w)に伴いカラーコード化されています。
私の納品書の順番通りにパッケージされていましたが、

確認したい人は、今は便利な時代でオンラインで抵抗値を表示してくれるwebページ「抵抗器のカラーコード計算機がありますのでクリックするとすぐ計算できますから参照してみてください。

抵抗値が確認出来たら、忘れないように袋にマジックで書き留めておくといいです。

7.半田付けした回路をピックに載せた

蛇の目基盤を10mm角に切断して部品配置しても良いのですが6点の部品しかないので有名メーカーのアンプのように空中配線にしました。半田付けした回路をティアドロップ型のピックに載せてホットボンドでシールドする事にしました。
この時の注意点として

1.部品の隣のリード線とショートしない事! 特にFETの足の間が狭いので接触しないように注意します。
2.ピックに載せるときは抵抗器の付け根を強めに曲げると簡単に割れて(折れて)しまいますから注意してください。
3.電池用の配線は電池スナップに元々ついた線の長さでは足りないので延長しておきましょう。

など以上の事に気をつけると簡単・短時間で組み上げられます。

 ブースターとジャックを接続する

ステレオジャックとキター内部をつなぐ配線は最初からついていた線にプラス1本するとジャックを挿した時だけ回路に電源供給されるようにする事ができます。私はたまたまベルデンのマイクケーブル(ギターケーブルとして使用)が余っていたので、250mm程の長さに切って外側の黒いシースをカッターで慎重に剥がして中の麻紐も抜いて使用しました。芯線も網線もきちんとスズメッキされています。かならずしもシールド線である必要はありませんが、とにかく

PU信号の通るリード線2本はキチンとしたもの(シースでなく芯線が太くてメッキされたもの)を使った方が音の面やノイズの面でも経年劣化の面でもでも良い結果が得られます。

しかしあまりに太すぎるとボディー内を通る穴に入っていかない事もありますので注意が必要です。ジャックはスイッチ付きジャックもありますが、特にストラトの場合ジャックスペースがギリギリで取り付け角度によってはジャックを差し込めなかったり、窮屈になったりすることもありますので、外周径方向にあまり飛び出ると結構な確率で不具合につながります。ですから半田付けの際も外周方向へ飛び出すようなつけ方をなるべくしません。まあ、ジャックスペース内を削ってしまえばいいのですが…。そんな経験もあり、私はステレオジャックを使っています。

8.ギター本体に回路を半田付け

ジャックとキター内部への線をつなぎ終えたら、ジャックプレートもねじ止めしてしまいます。前述のようにジャックスペースを考えて、特にプレートの反対側(底側)に端子やジャックピンが出っ張らないようボックスレンチで借り締めします。プラグを実際挿入してみてスムーズに入るかどうかチェックして問題があれば、ジャックの取り付け方向を回して調整します。それでもダメな時は、当たっていると思われる部分を彫刻刀のようなもので削ってください。(削った部分はノイズヘルなどのシールド塗料を塗っておくことをお勧めします)

プレートにジャックを締め付ける際はぜひ楽器専用のレンチで締め付けてやるのがいいです。

ストラトジャックプレートはただでさえ変わった形をしていて、奥まったところに薄い6角ナットがありますから。ラジオペンチやスパナなどではうまく締め付けられず下手をするとプレートが傷だらけになってしまいます。

締め付けが甘くて何回締めても緩んでくるという経験のある方は少なくないと思います。

またマシンヘッドの増し締めなど(糸巻きのビビリが無くなったり、音の伸びが良くなる事もある)にも使えて、さほど高価なものでもありませんから1つ備えておくといいです。

 楽器専用ボックスレンチ

PICKBOY ピックボーイ ボックスレンチ SC-150BX
PICKBOY
¥1,650(2024/05/08 18:56時点)
10mm/20mm/30mm

 ギター本体との配線は

上記が実態配線ですが、必要に応じて配線材を継ぎ足して半田付けして熱収縮チューブなどで絶縁しながら作業を進めていきます。配線材はこれも以前から持っていたベルデンの配線材セットがありましたので使用しました。
レースセンサー本家のノンアクティブの配線方法を確認してギター本体へ半田付けして行きます。ボリュームポットへの多数の線を半田付けしますので、前についていた線やカサカサになった半田などが邪魔になる場合は一旦無駄なリード線やはんだを除去して、きっちりまとめてから作業するのが得策です。

それらの古いゴミ?などは「半田吸い取り器」を使うと一気に取れます。

リボンタイプや半田こてつき電動タイプなどもありますがコスパを考えるとこんな感じのが手軽です。コテは前述のように60Wタイプの方が短時間で作業できます。ボリュームポットの端子に半田付けするときは、こちらもヒートシンクで根元を挟んで作業します。こんなひと手間で半田付けの苦手な人でも新品のポットに替えた直後なのにすでに不調になっているというトラブルは減らせます。

半田吸い取り器

 Beldenの配線材セット

9.ブースターに電池ボックスを設置する

普通の方はトレモロスプリングスペースに9V電池をスポンジで巻いてと設置と言う流れでいいと思いますが、私の場合、前の記事で書いたように「ハードテイル化」していますので、トレモロスプリングスペースはガラガラでしたので電池ボックスを取り付けました。電池ボックスの横幅が元からあいていたスプリングスペースとほぼ同じでしたので、これは簡単にポン付け出来ると思いましたが、穴の深さが2ミリほど足らず電池ボックスの底部分をベルトサンダーで斫って(ノコギリで切っても可)設置しなくてはなりませんでした。

バックパネルを切断して取り付けたので不格好です。

今思えば、バックパネルそのものに角穴を空けて接着剤や両面テープで取り付けてもよかったと思います。(ハードテイル化した場合ですが)

 006P電池ボックス

 カットすると丁度良い

 バックプレートに角穴空けが良かったかも

10.音出しチェック

お疲れさまでした。以上でギター内蔵型プリアンプの取り付けは終わりです。

フロントパネルを全部ネジどめする前に、電池を装填してシールドプラグをジャックをジャックに差し込んで音出しチェックをします。弦を張らずにチューニングフォークなどをピックアップに近づけて切り替えながらそれぞれのポジションで音が出るかチェックします。音が全く出ない場合ジャックプレートを外して見てください。時々ホット側がアース側に接触して無音と言うケースがあります。また、差し込んだプラグに半田付けしたケーブルが接触して居る事もありますので目視で点検してください。メデタク音が出たらすべてのねじをとめて、弦を張ってトーンチェックです。

張りのある締まった音。少しポットを下げた時に出るキラキラしたクリスタルがはじける様な?音になりました。

音量の比較
ギブソンレスポールcustomとアンプセッティングを同じにしてチェックしてみました。ピックアップの性質上中低音に関してはレスポールが大きい様に感じますが、高音に関しては当然質は違いますが、レスポールと同等程度出力されている様に感じました。レースセンサーでなく普通のフェンダー・ディマジオ等のピックアップなら間違いなく更に出力が増すと思います。

※ストラト音出し比較

今回のストラト
メイプル指板+ハードテイルに替えているので当然音はカチッとしてキラッとくる感じは好きです。弾いた感じも強力に反発する感じ。PUは3つともレースセンサーゴールドです。

FenderJPストラト
フェンダージャパンの物ですが一応これもアクティブサーキットです。ローズ指板+フロイトローズトレモロ。PUはフロント赤(元は青でしたが故障のため新赤に交換)・センター金・リア赤のレースセンサーゴールドです。

FenderUSAストラト
フェンダーUSAのイングウェイモデルです。ローズスキャロップド指板とシンクロナイズドトレモロ。PUは全部ディマジオです。